リモートワークネイティブと持て囃されたとある20卒はなぜ転職を決意したのか

はじめに

 私は大学院では機械工学を修め、20卒で大手通信事業会社に新卒入社して全く専門外の仕事をしているとある二年目の社員である。私の会社は入社から現在まで全てリモートで行ってきた。リモートによって、少なくとも私が想像していた、社会人生活は脆くも崩れ去り、2021年12月末日を区切りに転職を決断をした。もちろん、リモートが全ての原因ではなく今後の生存戦略も踏まえて色々な条件が重なった結果ではあるが大きな要因となった。今後の自分のために、なぜ転職に至ったのか、その理由などをここにある程度、詳細に記しておこうと思う。新卒で合わないなと感じている人やリモートワークによって自分が想像していた働き方と違うなと感じている人には刺さるかもしれない。

今の業務

 私はとあるサービスを開発していて、所謂フロントエンドエンジニアをしている。まあ簡単に言うと、ブラウザなどで表示する画面を描写するためのサーバ構築や、画面の実装などを行うソフトウェアエンジニアと思っていただければ良いだろう。エンジニア向けにいうとKubernetesやAnsibleなどの管理ツール系、PythonJavaScriptなどの言語を扱って冗長性のあるサーバ群の構築やサービスの新機能追加や改修を行っている。

 2020年6月の配属段階では、全くの専門外だったためsshとは?みたいな状況からスタートしたが、非常に面白く夢中になって勉強したのと先輩方のガイドもあって今ではKubernetesやAnsibleを使った構成管理をはじめとして簡単なサービスを一から作ることは問題なくできるようになりサービス開発の基礎は身につけることができたと感じている。

 しかし、リモート勤務により極めて限定的な人間関係や吸収スピード、刺激のなさなどといった面でリモート勤務に限界を感じ、転職の決意をするに至った。そこに至るまでの過程を記載する。

ソフトウェアエンジニアを志望した理由

 大学院ではJ○X○とターボファンエンジン関連の研究をしていたので今の業務とは全くと言って良いほど関連性がない。ではなぜこのような仕事を選んだのか、主な理由は下記の二点である。

1. 機械系エンジニアの生活に希望を持てなかった

 機械エンジニアの働き方は魅力的でない。彼らは大半が地方勤務でありかつ転勤の可能性も排除できない。やっていることは改善活動やそこらへんなのに地方のよくわからない場所にまでしらばれたらたまったものではない。自分が携わった製品が世に出回ったときは確かにやりがいを感じるだろう。しかし、それは本当に競争力のある製品なのかどうなのかみたいな視点に立つと日本の置かれている状況を踏まえて手放しで喜べない自分がいる事も想像に容易かった。そのため、機構、機械設計などの”純粋な”機械エンジニアになることは避けようと判断した。

下記は機械系の方向けの詳細

 ご存知のように機械工学は歴史があり完成度の高い学問である。既に出回っている車などの製品の"機械的な"構造などは考え尽くされ、改善され尽くされている状態と言って良い。もちろん細かな改善は今後も図られていくが、根本的な構造や機構の変化があることはそう多くない。既存プロダクトを担当する機械エンジニアはユーザに気づかれないような非常に細かな改善が求められていく世界であると思う。誤解があると大変なので一応付け加えるが、非常に重要な営みなのでこれを否定する意味合いは一切ない。

 つまり何が言いたいのかというと、有名な大企業メーカーに就職して機械系エンジニアになるということは、既に完成度の高い製品に対して細かな改善を積み重ねていくエンジニアになるということである。これは少なくとも私の性格に合わなかった。製品として歴史が浅く改善の余地が大いにあるものに関してはやりがいがあるのだろうが、家電や車などをはじめとして”機械構造”そのものの更新はもうほとんど起こることはない。待っているのは低コスト化とコモディティ化である。機械として複雑さを極めているあの車でさえ、EVによる内燃機関の排除により中国などから新規参入を許してしまっているのを見るとコモディティ化の流れが今後も一層加速するだろうし他国の勢いを見ていると日本産業コアコンピタンス的なのが失われていく方向にいくと考えるのは自然な捉え方ではないだろうか。

 最近の家電や車などをはじめとしたC向け製品のアップデートの大半は主にCASEが焦点になってくるだろう。しかし、このメインプレイヤーは機械工学というよりどちらかというと、制御工学、IoTの領分である。個人的に純粋に機械工学として魅力的な領域は宇宙やドローン分野などくらいで、既に世に出回っているほとんどの機械に待っているのは低コスト化とコモディティ化ではないだろうか。もちろん、生産技術エンジニアなどの他の職種や半導体生産装置や素材系のメーカなど世界でも目を見張るようなシェアを持っている企業も多数存在する。しかし、いずれにせよ上述した働き方の問題や一般的に知名度がない会社が多いため私はこれを敬遠した。

2. IoTなどソフトウェア技術に興味を持った

 これからは機械そのものの構造などよりも、それらを使ったデータ基盤のほうが重要度が増してくると感じた。今までは機械の中で完結していた情報がこれからはネットワークと繋がって情報が吸い上げられ管理されていくことになる。そうすればメンテナンスサービスが展開できるだけでなく、改善がかけやすくなり製品開発のサイクルが高速化することにも繋がる。私はこのような技術に将来性とやるべきことが多い領域だと感じたため、この国のデータの基盤が整えられるような規模を持っている会社に行きたいと考えるようになり、今の会社を選んだ。

 それと単純にプログラミングの面白さに気づいたのも大学院の信号データの解析からである。大学の頃の実験では、センサから吐き出された大量データがあるCSVをいちいちエクセルで処理してグラフなどを作成していたが、MATLABを触ってからはいろいろな解析手法、グラフィカルな表現を学びそれによって新たな知見を得ることができる経験をした。このことからプログラミングに興味を持ち、ラズパイを使って音の可視化などをしてとある学会主催のコンテストに出品したら最優秀賞を受賞することができた経験もソフトウェアに強い興味を持ち始めたきっかけである。

なぜ転職をしようと決意したのか

 今回の転職は色々な要素が複合的に合わさった結果であると言える。簡潔にまとめると下記のようになる。

  1. 機械工学の専門性もある程度生かした方がコスパが良い生き方ができると感じたから
    • 新しいことを学ぶコストがリモート環境では非常に高くなってしまい、これ以上モチベーションの維持ができないと判断した
    • ネットワークやサーバのみの話よりは自分の強みも活かせるセンサなどを扱う物理量を処理するような領域で仕事をしたいと感じた
  2. フルリモートによって人間関係が極めて限定的で今後も変化しそうにないこと
    • せっかく入った会社で新しい出会いもたくさんあっただろうに、研修なども全てリモートで新たな繋がりが得られなかった
    • 自分で知ろうと思った情報しか手に入らないので視野が広がらず単なる作業員として仕事をしている現状に強い危機感を覚えた
  3. 上司が信頼できなかった
    • 時間を守ることができない
    • 傾聴力がなくだらだらと結論がはっきりしない持論を喋る
    • 言葉選びや人の扱いが乱暴で心理的安全性を確保できなかった

 上記の理由が少なくともどれか一つであれば転職という選択は取らなかったと思う。自分の専門性を活かしたいと思うようになったのも学習サイクルがうまく回っていない、限界が見えてしまったと自覚したからであって、これがうまく回って仕事が順調に進んでいたら違うことを考えていたかもしれない。

 リモート勤務もバランスが大切で全てリモートにしているようでは組織として緩やかに崩壊していくと私は考えている。私は就活をしている時に弊社に二週間の職場受け入れ型のインターンをしたりしていたのでその勤務イメージと酷く乖離してしまっていたのも原因だと思われる。人間関係について言えば、私は幸いなことに二週間インターンをしていた頃に知り合った同期や先輩を中心に多くの繋がりを持てている。なので、そういうのが一切なくリモート入社からの人は想像を絶する大変さだろうと察する。

 最後の上司の問題は自分にとって非常に大きなウェイトを占めていた。基本的に口調や人遣いが荒く、部下の意見を傾聴できない上司の姿に愛想が尽きてしまった。それに付き合っていられるほど、会社やチームへの帰属意識が醸成されていなかったのも一つの要因だろう。同期の話を聞いしていると皆、チームの人間は優しく心理的な安全性は確保されていると口を揃えていた。なので単純にそのような上司を引いてしまったのだろう。上司の雰囲気がチーム全体の雰囲気になっているところがあるのでどうも働きづらかった。まあ、メンバーに相談した時も「あの人はああいう人だから」と見放していたのでリアルで観察していればそのような納得の仕方もあったのかもしれない。リアルであれば小声で文句を言うとか、態度で示すとか思いを伝えるやりようはあると思うがそれができないのは本当に縛りプレイだなと思う。必要以上に関わらなくていいのは良いところなのだろうが根本的な解決になっていない。

 もちろん、我慢してこの会社に居続けることで確実に今より給与も立場も上がっていく。新卒就活で二週間のインターンまでして様々な企業としての将来性を吟味した挙句に入った会社をものの一年半で辞めるなどはっきり言って狂気の沙汰ではない。しかし、ここまでいろいろな要因が重なってしまったのではむしろ面白いとさえ思う。ここまででなければ転職しようなどと思わなかったはずで、これから得られる経験や知識は絶対と言って良いほど得られるはずではなかったから。

転職先について

 私は、とある外資でロボティクスエンジニアをしていくことになった。工学の修士をとっているという点とソフトウェア開発経験を持っている点、多少の英語スキルが評価され、産業用ロボットの応用技術エンジニアのポストにつくことができた。給与は200万アップし、やっている内容も将来性が高く非常に興味深いので、割と成功したと思っている。これから扱うプロダクトは今後の物流や生産技術には間違いなく展開される技術である。ぼかしていうと任意に積まれてきた部品箱を画像解析し、どのように積まれていてどう掴めばよいか産業用ロボットに制御指令を出すようなカメラモジュール、要は機械の脳の部分を扱う。これによりピッキングなどの工程を機械化できる。業界としてはFactory Automation(FA)分野だ。妥協なく勉強し、地に足のついたユニーク性のあるエンジニアになっていきたいし、将来的にはマネジメントも視野に入れてその会社の主要ポストにつきたいと思っている。

 転職活動について簡単に記載する。これは困難を極めた。第二新卒という時点で変な求人も多いが、しょうもない飾り文言などではなく、給与と結局何をやっているのかを精査した。また、キャリアチェンジになるので第二新卒でない求人の場合はスキル不足という形で落とされることが多かった。しかし、転職において落とされるのは単純にそこが求めているものとマッチしていなかっただけなので特に落ち込む必要はないと思う。むしろ入ったところでスキルやレベルが合わずまた転職を検討してしまう可能性すらあるので逆に私は早い段階で落としてくれてありがとうと思うようになった。なので自分が何を求めているか、向こうが何を求めているかを明確に定義してそれをもとに進めると具体性のあるアクションが取れ、納得感のある結果を得られると思うので時間と自分の体調やモチベーションを見極めながら臨機応変に進めていくことを意識すると良い。

 転職は本当にタイミングだと思うので根気よく、必要であればエージェントも駆使しながら探していくのが良いと思う。エージェントであれば自分はリクナビが一番よかったと勝手に思っているがエージェントも人なので変な人もいるし結局求人を紹介したいだけの人もいるのでそこら辺はまあ運だろう。自分が一番良かったのは、自分の可能性を見いだしてくれ、率直に共感してくれる人だった。生憎、自分で見つけて応募した求人から内定をいただきそこに行ってしまったのだが、おそらくそれがなかったらその人経由で転職を決めていただろう。次も帰路がある時はその人に連絡したいと思っている。

 求人の目利きだが、常に募集しているような求人は何かしら人が抜けていく原因があるので外して良い。なぜ求人があるのか、その背景を確認しよう。自分の場合は海外で成果を上げているロボティクス企業が日本法人を立ち上げるからと言う理由だったのでプロダクトの競争力、将来性を加味して決断した。オフィスができたのが1ヶ月前というのも衝撃的で、日本人として初めての内定をいただいた。このような求人はなかなかないので特殊かもしれないが、日系外資問わずWe are hiring!のタイミングを逃さぬように常にアンテナを張ってこれ良いなと思ったら深く考えすぎずにすぐ履歴書や職務経歴書的なものを送りつけよう。第二新卒において募集条件とか正直気にしなくて良い。相手が勝手に判断してくれる。

おわりに

 自分が入社してから転職に至るまで、簡単に整理してみた。あくまで自分のための整理なのでこれを公開する意味はあまりないだろうがもし参考になった人がいれば嬉しい。人によってはフルリモート環境は非常に厳しい環境であることはまだ知っている人は少ないかもしれない。ただリモートをしていて大変な思いをしている新人は多いと思うし、それが可視化されていないだけだと勝手に思っているので、同じような悩みを抱えている人がいればこんなケースもあるんだと参考にしていただければこの記事を公開した意味が少しはあったのかもしれない。大変な時代に新卒として入ってしまったな感はあるがこのおかげで自分は次のステップに行くことができたのでなんだかんだこれも縁なのかなと考えている。大切なことは環境を利用しながら自分の頭で考えて必要に応じて行動に移していくことだろう。自分はリモートなのを良いことに少し暇になったり時間を作って勤務中に履歴書などを作成したり求人を漁っていた時期もあったぐらいだ。そのTry&Errorによって人生は進んでいくのかもしれない。転職した結果どうだったかはまた時が経った時に振り返るとしよう。ここまで付き合ってくれてありがとう。